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2009年6月15日月曜日

大西伸明展 垂直集め

中京大学アートギャラリー
C・スクエア
2009年4月13日(月)~5月16日(土)
TEXT:深山路子


私(以下、M)がギャラリーに入ると、そこには消波ブロック(以下、S)がいてこう言った。


S「消波ブロックですが、何か?」

M「ええ、まあ、そうですよね。そう見えますよね」

S「びっくりしないんですか?」

M「最近は、裸体でも死体でも家でも何でもギャラリーにあるから、だから消波ブロックくらいあっても、ああそういう作品かなって」

S「そうですよね、ギャラリーに消波ブロックの一つや二つ転がってるもんですよね」

M「ただ、重いのによく持ってきたなっては思いますけどね」

S「重くないですよ」

M「え」

S「別に重くはないですよ」

M「はあ」

S「そんなには」

M「…美術輸送ですか?でも別に消波ブロックだったら普通の輸送かな」

S「丁重に扱ってもらってますよ。壊れやすいんで」

M「壊れやすい?コンクリートでしょう」

S「FRPですよ、もちろん」

M「え、そうなの。じゃああれ?作りもののほうの人?」

S「作りもののほうの人です」

M「ああ、そう。そっちなんだ」

S「そうです。その証拠に頭のてっぺん見てください」

M「ああ、透けてる。透明の樹脂だね」

S「別に隠してるわけじゃないんです、作りもののこと」

M「だろうね。その頭じゃね」

S「かといって、気付かない人をばかにしたいわけでもない」

M「うん」

S「ただ、作りもののほうの人も世の中には紛れてるってこと」

M「ええ」

S「あなた、ぼんやりしてるほうの人みたいだから」

M「それはどうも」

S「でもだいたいにして美術作品は、作りもののほうの人だよね」

M「というと」

S「作ってる、って時点でもう作りものでしょう」

M「作りもの」

S「自然じゃないですよ」

M「まあ、たしかに」

S「それに感動したりするんだから、なんだかね」

M「ほんとに」

S「でもたいていのものは自然じゃないからね、世の中」

M「長い話しになりそうですね」

S「私の型になった消波ブロックだって大量生産の作りものだし」

M「そうですね」

S「あのミニクーパーね、あれは過去があってね」

M「その話はいいですよ。またにします」

S「ああ、それじゃ」

M「それじゃ」


深山路子 1977年愛知県生まれ。アートライター。専門はイギリス写真史。


写真:《shoha burokku》

FRP・エボキシ樹脂・アクリル絵具・ウレタン塗料、175×210×190cm、2008年
撮影/二塚一徹