中京大学アートギャラリー
C・スクエア
2009年4月13日(月)~5月16日(土)
TEXT:深山路子
私(以下、M)がギャラリーに入ると、そこには消波ブロック(以下、S)がいてこう言った。
S「消波ブロックですが、何か?」
M「ええ、まあ、そうですよね。そう見えますよね」
S「びっくりしないんですか?」
M「最近は、裸体でも死体でも家でも何でもギャラリーにあるから、だから消波ブロックくらいあっても、ああそういう作品かなって」
S「そうですよね、ギャラリーに消波ブロックの一つや二つ転がってるもんですよね」
M「ただ、重いのによく持ってきたなっては思いますけどね」
S「重くないですよ」
M「え」
S「別に重くはないですよ」
M「はあ」
S「そんなには」
M「…美術輸送ですか?でも別に消波ブロックだったら普通の輸送かな」
S「丁重に扱ってもらってますよ。壊れやすいんで」
M「壊れやすい?コンクリートでしょう」
S「FRPですよ、もちろん」
M「え、そうなの。じゃああれ?作りもののほうの人?」
S「作りもののほうの人です」
M「ああ、そう。そっちなんだ」
S「そうです。その証拠に頭のてっぺん見てください」
M「ああ、透けてる。透明の樹脂だね」
S「別に隠してるわけじゃないんです、作りもののこと」
M「だろうね。その頭じゃね」
S「かといって、気付かない人をばかにしたいわけでもない」
M「うん」
S「ただ、作りもののほうの人も世の中には紛れてるってこと」
M「ええ」
S「あなた、ぼんやりしてるほうの人みたいだから」
M「それはどうも」
S「でもだいたいにして美術作品は、作りもののほうの人だよね」
M「というと」
S「作ってる、って時点でもう作りものでしょう」
M「作りもの」
S「自然じゃないですよ」
M「まあ、たしかに」
S「それに感動したりするんだから、なんだかね」
M「ほんとに」
S「でもたいていのものは自然じゃないからね、世の中」
M「長い話しになりそうですね」
S「私の型になった消波ブロックだって大量生産の作りものだし」
M「そうですね」
S「あのミニクーパーね、あれは過去があってね」
M「その話はいいですよ。またにします」
S「ああ、それじゃ」
M「それじゃ」
深山路子 1977年愛知県生まれ。アートライター。専門はイギリス写真史。
写真:《shoha burokku》
FRP・エボキシ樹脂・アクリル絵具・ウレタン塗料、175×210×190cm、2008年
撮影/二塚一徹